忙しかったゴールデンウィークが過ぎ、再び畑に戻ってきました。
畑では草や野菜が生き生きと育ち、小鳥たちの美しいさえずりがあちこちから聞こえてきます。さわやかな五月の風が疲れた心を癒してくれます。
さて、4月14日に入学式を行い、私たちのNARA Steiner Schoolが、無事にこの世界に誕生しました。
3名の子どもたちとの毎日は本当に、本当に幸せです。
竹ドームの完成にはまだもう少し時間がかかりそうですが、たとえ雨漏りがしても、たとえ未完成だとしても、3名の子どもたちは自分達の教室である竹ドームのことが大好きで、みんなで毎日楽しく過ごしています。
子どもたちとの毎日は、畑での自由遊びから始まります。
昨日の朝は、こんなことがありました。
私はその時、一人のお父さんと一緒に、種籾を播くための苗床の準備をしていました。その方は畑仕事の経験がそれほどない方ですので、鍬の使い方や溝の掘り方を丁寧に説明してから、二人で苗床周りの溝を掘り始めました。
そこに、子どもたちがやってきたのです。
そうして、なんとこう言うではありませんか!
「手伝っていい?」
驚きました。でも、もちろんこう言いました。
「いいよ。やってみてごらん。」
すると、子どもたちは初めて使う鍬を手にして、私たちの真似をしながら一生懸命溝を掘ってくれたのです。
最初は私が後ろから一緒に手を取って、そこから次第に自分一人の力で、子どもたちは働いてくれました。
もちろん1年生ですから、大人と同じような長い時間働くわけではありません。でも、短い時間の中で、ものすごく集中して手を動かしてくれました。
その時、私の中で、ペーターさんからいただいた言葉がすとんと腑に落ちたのです。それは、次の言葉でした。
「教師は農夫に、農夫は教師になるべきだ。」
私は教師です。ですから、畑仕事は素人です。
当然、自分自身を「農夫」と言えるほどの経験も知識もありません。
でも、畑にいて、さまざまな鳥たちの声を聞きながら土や野菜に向き合っていると、なんとも言えない幸福感を感じます。
日に日に生長していく野菜たちを眺め、声をかけながら、もっともっと彼らのことが知りたい、もっともっと美味しい野菜が作れるようになりたい、そう思っています。
鎌や鍬やシャベルや草刈機を使う時には、無理のない、無駄のない動きができるように、毎回意識しながら働いています。
だから、「農夫を目指す教師」といった方が良いかもしれません。
でも、そうであったとしても、子どもたちは教師である私のことを模倣しようとします。そうして、私がやっているように、鍬を使おうとします。
教師が農夫を目指しながら活動したら、子どもたちは土と親しみ、野菜と仲良くなり、地球を自分の居場所だと感じるようになっていくでしょう。
そして、もしここに共に働く農夫の方がいらっしゃったとしたら、その方が畑のことだけではなく、ここにいる一人ひとりの子どもたちの発達のことを考え、今の時期にふさわしい働きかけの方法を考えてくれるのなら、子どもたちはその人のことを、心から教師だと感じるでしょう。
まだ始まったばかりのNARA Steiner Schoolですから、常時働いているのは、今のところ教師である妻と私の二人だけ。当然、「農夫」の方ははまだいません。でも、いつかきっと、子どもたちに興味を持ち、その健やかな発達を支えようと考えてくれながら、農業に従事しようとしてくださる方が現れてくださると思います。
そしていつか、「教師でありたいと願う農夫」も、「農夫でありたいと願う教師」も、あるいは、「教師や農夫でありたいと願いながら農園の中で自分の個性を活かしながら働く親、大人」もたくさんいる理想のコミュニティーができることでしょう。
そこではみんながそれぞれの個性に合わせて働き、みんなが子どもたちにとっての「教師」であり、「農夫」となるでしょう。
こんなイメージを思い浮かべると、なんかすごくワクワクしますよね?
このイメージをしっかり持ちながら、子どもたちとの一日一日を、大切に過ごしていこうと思います。
それにしても、畑の中での子どもたちは、実に生き生きと過ごしています。そこにいられる私たちは、本当に本当に幸せです。
畑の中のシュタイナー学校、最高です!
2024年5月10日
栄 大和