3月になりました。
畑はすっかり春の陽気です。
私たちNARA Steiner Schoolの開校前の準備が少しずつ進んでいます。
今日は、親御さんたちやそのお知り合いの方々に集まってもらって、畑の学び場や苗床、トイレなどに使える“あるもの”を作り始めました。
それは……「竹ドーム」です。
竹ドーム。
ちょっと前まで、その存在すら知らなかった竹で作った建造物。
台風にも雪にも強く、それでいて身近なところにある竹を材料にして作ることのできる半円形の空間。
もし竹を無料で手に入れられれば、かなりのコストパフォーマンスが期待されます。
You Tubeを検索すると、たちまちいろいろな情報が手に入り、それを見ているだけでいつの間にかすべて理解し、自分が簡単にそれを作れるような気になってしまいがちです。
でも……物事はそんなに簡単ではありません。
そこで、妻と二人で竹を切り出して、昨日までの間に、半分のサイズの小さな竹ドームを試しに作ってみました。
昨日までの間に、都合3日間かけて、毎回汗をびっしょりかきながら、そして慣れない作業に戸惑いながら、それでも、なんとか作り切りました。
そして今朝。
集まってきた親御さんたちは、二人で作った竹ドームを見て、びっくりした顔でこう質問します。「わあ、すごい! これって、本当に二人だけで作ったんですか!」
はい、そうです。
そして、今日はそれを皆さんで準備しますよ。
……ということで、早速竹を切り出し、運び出す作業から始めました。
畑のお隣の竹林の方のご好意で、自由に竹を切らせていただき、畑まで運び込みます。次は、その竹を、みんなで六等分します。代わりばんこに重い大きな竹割器を手に持ち、力強い掛け声と共に押し込みます。他の皆さんも、一緒に竹を支えながら、まるでお寺の鐘をつくように、竹を壁に押し当てていきます。どの方も最初はおっかなびっくりだったのですが、すぐに慣れて、真剣に力を入れていきます。
そして、「パカーン!」という音とともに、竹が六つに割けた時の爽快感!
もう本当に最高です。
その後は節の出っ張りをノコギリやナタで平にし、それを焚き火の上であぶって、油抜きをしていきました。
大人たちが真剣に作業しているのをなんとなく感じながら、子どもたちは自由に遊び回っています。
途中の休憩時間には、みんなで持ち寄ったおにぎりやおかずを、分けていただきましたが、子どもたちも大人の方々も、そのおいしさに笑顔が絶えませんでした。
途中、ふと気づいたのですが、もうすでに、畑の学校が始まっているのかもしれません。妻と二人で一生懸命遊んでいる子どもたちを見守っているうちに、なんとも言えない幸福感が湧いてきました。
今日の竹ドーム作りで、皆さんがきっと感じてくださったであろうこと、それは、これまでできなかったことができるようになる喜びだと思います。そしてその感情は、何物にも代えることのできない尊いものだと思うのです。
自然の恵みである竹をいただいて、その重さを感じつつ、地水風火の力を借りながら、それを変容させていく今日の作業が、私たち大人をこの畑の場所に深く結びつけてくれました。
大切な畑、大切な土地、そして、かけがえのないこの地球。
今日、私たち大人たちは、お互いの顔を見ながら真剣に話し合い、協力して手足を動かし、心の底からの満足感を感じました。笑顔を浮かべながらお互いをたたえ合うその雰囲気が、なんとも言えない満ち足りた空気感をこの場に創り出しました。
自分達は、共に汗を流した仲間、子どもたちのためにより良い場所を創ろうとして一生懸命働いている仲間。
これこそが、私たちが子どもたちに渡したい大切なことです。
地水火風とつながり、鉱物界や植物界、動物界とつながる。そして、自分以外の人間と繋がっていく。
そんな努力を真剣に行う大人たちの輪の中で、子どもたちも世界と、地球と、人々と、確かにつながっていけることでしょう。
そして子どもたちは、地球を愛し、そこに存在するすべてのものを愛おしく思い、仲間と共にそこを大切にしていくでしょう。
国際情勢に目を向けると、ウクライナやガザの状況は、ますますひどくなっていっているように感じます。
でも、自分の中に、自分達のいる場所に、真の平和を創っていくことこそが、世界的な紛争を解決する道なのだと私は確信しています。
いつか世界中の人々が平和に暮らせるように、そして誰もが地球を愛し、かけがえのない存在として大切にしていけるように、そのために私たちは、この歌姫の畑で、子どもたちと共に新しい運動を始めています。
明日は、3.11。
13年前の想いをもう一度蘇らせ、犠牲になられたたくさんの方々の想い、困難を共に乗り越えてきた多くの仲間たちの姿を浮かべながら、私たちはこの場所で、平和を形作っていこうと思います。
いよいよあと一ヶ月。
やることはたくさんありますが、自然体で、楽しみながら準備をしていこうと思います。
2024年3月10日
栄 大和