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11 ペーターさんから学んだこと

Farm-based education(行動教育学)を提唱していらっしゃるペーター・グッテンヘッファーさんが10月の末から来日され、私たちも、北海道の「ひびきの村」、十勝の講演に同行させていただきました。十勝では、「コスモス森の学校」を見学させていただき、担任の先生たちとも交流させていただきました。

 

そして、そのペーターさんは、なんと一昨日から今日まで奈良を訪れてくださり、プライベートな時間の中で、たくさんのことを学ばせていただきました。北海道での学びに加えて、そのようなかけがえのない時間を共に過ごせたことは、私たちにとって、とても貴重なものでした。

 

何よりも一番感心させられたこと、それはペーターさんの中にある世界に対する強い興味、関心でした。

 

例えば、法隆寺では、五重塔や金堂などの建物を遠くから、また近くからじっくりと眺め、手で触れ、そしてその中にある仕草を動きで表現しようと試みていらっしゃいました。仏像を見るときには、一つひとつの細部を丁寧に観察し、真似をし、それらの中に隠されている動きやイメージやアイディアを捉えようとしていました。

 

興福寺では、お気に入りの仏像のそばにずっと立ってその美しさを感じ、描写し、共有してくださいました。

 

石舞台古墳では、横から、下から、さまざまな角度で巨石を眺め、触り、感じ、そこにある何かを掴もうとしていらっしゃいました。もともとペーターさんはシュタイナー学校の歴史の教師だったのですが、特に、世界中の巨石のモニュメントにとても詳しい見識を持っていらっしゃいますので、イギリスの遺跡や南米の遺跡などと比較しながら、その意味を説明してくださいました。一般的なガイドブックには掲載されていない特別なアイディアを聴いているうちに、私の心にもワクワクした想いが湧いてきました。

 

ガイドブックの説明に頼ることなく、自分の目で見て、自分の耳で聴いて、そして自分の手で触れ、自分の体を動かすことによって感じる、そんなペーターさんの顔は、まるで子どものように輝いていました。

 

「教育は、自己教育である」−−ルドルフ・シュタイナーはそう言っています。子どもに一方的に教え込むのではなく、共に学んでいく。でも、そのことを本当に腑に落ちて理解するのは、私にとって簡単ではありませんでした。

 

でも、今回、ペーターさんと共に過ごさせていただく中で、私の中にも、世界に対する強い興味、関心が湧いてくるのを感じました。頭で考えた死んだ知識ではなく、自分の全存在を使って世界と出会おうとしていらっしゃるペーターさんのそばにいると、自分にもその生き生きとした熱が伝わってくるのです。世界はなんて面白いところなんだろう、一体どんな力が働いてこんなものができたのだろう、たくさんの疑問が、情熱と共に浮かんできます。それらの疑問は、決して固まった冷たいものではなく、生き生きとしていて、私がそれを解決するのを温かく待ってくれているように感じます。

 

こんな大人の人のそばにいれば、子どもたちはきっと自ら世界の秘密を体験し、学びたくなるでしょう。

 

学び続ける大人がいて、その横で、大人のそんな心持ちを模倣し、学んでいく子どもたちがいる。それこそが、農園の中での核となっていくことでしょう。

 

今回のもう一つの宝物は、同じ道を歩んでいる「仲間たち」に出会えたことです。

 

ひびきの村で、森の学校で、同じような目標を掲げて、そこに向かって歩んでいるたくさんの教師たち、農業従事者たち、そして親御さんたちに出会いました。ほとんどの方々が初めてお会いした方ばかりでしたが、不思議なことに、みんなで輪を作ってペーターさんの話を聴いていると、とてもそんなふうには思えませんでした。それどころか、ここに私たちの仲間がいる、という感情を強く感じたのです。

 

農園ベースのシュタイナー学校というアイディアは、世界中を見渡しても、まだまだほとんど知られていません。ある意味、とても斬新な、理解してもらうのが難しい考えです。それはまるで、目の前に続く細く、長く、険しい道のようです。両側にはたくさんの困難が待っています。いつ奈落に落ちてしまうかわからない、そんな不安や恐れの中にある道だと言うこともできるかもしれません。でも、そんな道を、共に歩んでいこうとする仲間がいる、そう感じることが、私の中に強い勇気の火を灯してくれました。

 

英語で人間のことを、”Human Beings”と言います。「人間」とは固定化された、完成された存在ではなく、現在進行形で変容し、進化し続けていける存在です。

 

自分には、このかけがえのない世界のために、地球のために、宇宙全体のために、できることがある。そのために、自分の手足を動かして貢献していきたい。

そんな熱い衝動を、いつか子どもたちが感じられるように、そのために、今、ここで、私ができることに取り組んでいこう。

そのような強い想いを、ペーターさんとたくさんの仲間たちからいただいた貴重な時間でした。

 

焦らず、怠けず、ゆっくりと、でも確かに、この道を歩んでいこうと思います。

 

20231110

栄 大和