エクストラレッスンのご案内
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4 “キンダーガルテン”から“学校”へ

春の陽射しが降り注ぎ、黄色や白や紫色のたくさんの花々が咲き乱れる私たちの畑に、先週、初めて幼稚園の子どもたちが来てくれました。畑の学校の“プレ”の始まりです。

 

幼稚園から小学校に上がるハードルは、大人が思っている以上に大きなものです。

 

子どもたちにとって、学校に通い始めるということは、大きな喜びを伴うものであると同時に、それと同じくらい、あるいはそれよりももっと大きな不安が沸き起こる体験でもあります。

 

近年は特に、子どもたちの育つ環境が大きく変化していいます。体の中に困難さを抱える子どもたちの数も多くなっており、そんな子どもたちがいきなり小学校の教室に静かに座り、先生の話を聞いて活動することは、かなり無理のあることのように思えます。

 

 ですから、幼稚園から学童期への移り変わりがスムーズにいくようにサポートすることは、今の時代に求められるとても大切なことだと、私たちは考えています。

 

 さて、やってきた子どもたちは、さっそく畑を探検して回ります。

 

畑の溝や用水路にかけてある一本橋をこわごわと眺め、そして、勇敢にチャレンジしていきます。水の中から顔を出しているカエルを見つけ、眺め、触れようと格闘します。でこぼこ道をつまずかないように、溝に落ちないように、ジャンプして回ります。畑にある食べられそうな草を手にとって、味わいます。泥んこの中に素足をおそるおそる突っ込んで、でもその後は指からはみ出る泥の感覚を楽しんで歩き回ります。あっという間に泥だらけ! そして、たっぷり遊んだ後は、水路を足でせき止めてタンポポを入れた「タンポポ足湯」に足を浸して、草のブラシで泥を洗い落とします。

 

着替えが1セットでは済まないほど、子どもたちは泥んこになって遊び回ります。

 

子どもたちの行動の一つひとつが、とても興味深く、楽しく、面白くて、私たちも思わずニコニコしたり、大笑いしたりしながら、共に時間を過ごすことができました。

 

 さて、そんな子どもたちの様子を見ながら、私は、「Kindergarten/キンダーガルテン(キンダーガーデン)」という言葉の意味を考えていました。

 

 幼い子どもたちには、言うまでもなく、自然が必要です。子どもたちは自然の中で、そこにあるものを全身で感じながら過ごします。それが子どもたちの本来あるべき姿だと感じます。もちろん守られた室内の環境の中で過ごす時間も忘れてはなりませんが、小さな子どもたちが四角い校舎の中に一日中閉じ込められるのは、ふさわしいことではありません。彼らは、自然の中で、自然にあるものを使って、自由に遊ぶことが必要なのです。

 

 ただし、その自然は、「手つかずの自然」ではありません。なぜなら、この年齢の子どもたちはどこであろうがその中に入っていき、遊ぼうとするからです。マムシのいそうな藪の茂みも、落ちたら大怪我をしそうな窪みも、何がいるかわからない沼の中へでも、恐れずにどんどん入っていくからです。

 

 だからこそ、この年代の子どもたちは、人間の手の入った守られた空間、つまりガルテン(ガーデン)の中で過ごすことがふさわしいのです。

 

そのためには、大人が日常的に世話をし、手入れしている畑の環境がぴったりです。もちろん、そこにあるのは作物を育てる畝だけでなく、走り回れる小道や、落ち葉を集められる木陰や、どろんこ遊びができる池などもあります。そんな「子どもたちのための庭」の中で、彼らは思う存分遊ぶことができます。そして、そこには季節の作物が生長していて、大人たちが旬の作物を収穫し、その場で料理をし、それを子どもたちも遊びとして真似しながらみんなで味わうこともできるわけです。

 

 守られた空間の中で自由に、のびのびと動き回ることに加えて、形作る活動も、忘れてはいけない大切な要素です。

 

 あふれんばかりの生命力に従ってのびのびと躍動し、育っていくこの年齢の子どもたちは、何かのトレーニングやエクササイズをさせようとしたり、何か決まったことを行わせようとしたりしても、ほとんど興味を示しません。なぜなら、それがこの第1・七年期の子どもたちの特徴だからです。

 

 とは言え、そのままで良いわけではありません。彼らは少しずつ第2・七年期のための準備をしていく必要があるからです。ですから、子どもたちの活動の中に、少しずつふさわしいリズムを入れ込んでいく必要があります。そのために、おやつの前にお祈りの言葉を唱えたり歌を歌ったり、その間待つことを練習したりすることが必要になってきます。

 

 少しずつ自由になってくる想像力の力を育ててあげることも必要です。素朴な人形を使って短いお話を語ってあげることは、そのためにとても大切なことだと感じます。もちろん最初のうちは、座って、語られる内容を聞いて、そこからイメージを頭の中に思い浮かべることは簡単ではありません。でも、同じ話を何度も繰り返して聴くことによって、少しずつ頭の中にイメージを形作る力が養われていきます。そして、その形作る力こそが、学童期の学ぶ力へと変容していくのです。

 

 楽しそうに帰っていく子どもたちを見送りながら、私たちの心は悦びに満たされていました。

このプレの活動を少しずつ積み重ねていけば、その中で、きっと私たちの目指す学校は自然に形作られていくだろう、そう確信したかけがえのない時間でした。

 

来てくれた子どもたち、連れてきてくださった親御さんたちに感謝します。

 

次回は、どんな姿が見られるか、楽しみです。

 

 

2023410

 

栄 大和